東京日本橋で学んだこと:矯正と歯周病、2つの専門を深める日々
前回は、愛媛での勤務医時代から徳島大学大学院、そして東京・日本橋での綿引淳一先生との出会いまでをお話ししました。
今回は、東京に来てから自分がどう変わってきたか、そして現在どのような環境で診療を行っているかについてお伝えしたいと思います。
矯正治療は、なぜ医院によって方針が違うのか
矯正治療を受けようと思って複数の歯科医院を訪れたとき、「先生によって言うことが違う」と感じた経験はないでしょうか。
実はこれには理由があります。矯正治療は、虫歯治療や歯周病治療と比べて、一つの「正解」が確立されにくい分野です。世界的に著名な先生方がそれぞれの治療哲学を持ち、それぞれの流派が体系化されているため、どのアプローチを選ぶかによって、治療の進め方や結果が変わってくることがあります。
綿引先生のもとでは、そうした各流派のメリット・デメリットを客観的に整理しながら、「科学的な根拠として裏づけられている部分」と「経験や哲学に基づく部分」をきちんと区別して考える姿勢を、学ばせていただいています。
まだまだ道半ばではありますが、以前よりも「なぜその治療が必要なのか」を患者さんに丁寧にご説明できるようになってきた実感があります。
先生は現在、この考え方を広めるために学会の主催や歯科医師向けの専門コースも開かれており、そのお手伝いをする中で、私自身の学びも深まっています。
「歯周病の治療だけ」では、患者さんの未来を守れない
以前の自分を振り返ると、「歯周病専門医としての視野」に収まりすぎていたと感じます。
歯周病の治療はもちろん大切です。ただ、目の前の症状を治すことに集中するあまり、患者さんのお口全体の将来像——「この方は10年後、20年後にどういうお口の状態でいられるか」——を、最初から大きく描けていなかったのです。
綿引先生のもとで学ぶようになってから、その視野が少しずつ広がってきました。
歯周病の治療・根の治療・被せ物・矯正治療、それぞれの専門領域を組み合わせながら、「この患者さんが最終的にどういうお口になれるか」という全体像を、治療の最初から描けるようになってきた、という実感があります。
最初のプランニングで、治療のゴールが変わる
この学びの中で、もう一つ大きな気づきがありました。
治療のゴールは、最初の計画(プランニング)によって大きく変わるということです。
以前は「まず歯を残すこと」を優先するあまり、患者さんにお伝えできるビジョンが、どこか控えめな範囲に収まりがちでした。しかし実際には、最初の段階でより高い理想を描き、そこから逆算して計画を立てることで、患者さんが最終的に手にできる結果が、大きく変わることがあります。
「歯を残すこと」と「美しく噛みやすいお口をつくること」を、最初から両立させて考える——これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実際の治療でそれを実現するためには、非常に高い技術と経験が必要です。
マイクロスコープで、「見える治療」を学ぶ
東京での学びには、もう一つ大切な出会いがあります。
現在、私は八潮にあるBivi歯科クリニックにも、週2日の非常勤として勤務しています。院長の武川先生は、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を駆使した精密な歯周病治療の専門家であり、MINST(できるかぎり歯ぐきへの負担を少なくしながら行う歯周治療のアプローチ)を実践されている先生です。
マイクロスコープとは、治療部位を数倍〜数十倍に拡大して見ることができる機器です。肉眼では確認できない細部まで見ながら治療を行うことで、精度と安全性が大きく向上します。
武川先生には、マイクロスコープのポジショニングから細やかな器具の使い方まで、丁寧に手ほどきをしていただいています。「正確に見える」ことが治療の質をどれほど変えるか——その実感を、毎週の臨床の中で積み重ねています。
現在の私について
こうして現在は、東京・日本橋のAQUA歯科矯正歯科包括CLINICで副院長として診療を行いながら、週2日はBivi歯科クリニックにて歯周病専門医のもとで研鑽を続けるという生活を送っています。
綿引先生から「矯正×歯周病の包括的な治療の視点」を、武川先生からマイクロスコープを用いた精密な歯周治療の技術を。異なる方向から学べているこの環境は、今の私にとって本当に恵まれたものだと感じています。
まだ学びの途中ではありますが、こうして積み上げてきた経験と視点を、患者さんお一人おひとりの治療に活かしていきたいと思っています。
次回からは、実際の治療についてのお話や、患者さんからよくいただくご質問にお答えする内容もお届けしていきます。よろしければ、またお付き合いいただけると嬉しいです。
監修者プロフィール
歯科医師:和田明大

公立九州歯科大学歯学部を卒業後、歯周病・インプラント専門医に6年間師事する。そのかたわら、歯周病学を学ぶため徳島大学歯周歯内治療学分野にて研鑽を積む。
その後、歯周治療と矯正治療の連携に興味を持ち、包括的矯正治療を実践すべく綿引淳一氏(東京 中央区開業)に師事。
現在は東京都中央区日本橋にて診療を行いながら昭和医科大学歯科矯正学講座に所属し、矯正学に関する研究を行っている。歯科用顕微鏡やレーザーを使用した歯周組織再生療法・根面被覆術を得意とし、矯正治療や保存修復治療を含む包括的な治療を実践している。
略歴
- 2016年
- 九州歯科大学歯学部 卒業
- 2016年~2022年
- 医療法人仁和会 勤務
- 2018年〜2022年
- 徳島大学社会人大学院(歯周歯内治療学分野) 博士課程修了
- 2022年〜
- 東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科包括CLINIC 副院長
Bivi歯科クリニック 非常勤勤務 - 2024年〜
- 昭和医科大学歯科矯正学講座 普通研究生
包括的矯正歯科 Ortho-Perio アドバンスコース チーフインストラクター
資格
日本歯周病学会 専門医
日本包括的矯正歯科学会 理事
日本歯科保存学会 会員
日本矯正歯科学会 会員
